モチモチまるたん日記

一家5人暮らし。どん底の生活からの再生日記。いつか豊かな生活を手に入れるため、日々もがきながら何かに挑戦中。

孤独と寂しさから生まれる勘違いの愛。実話⑤

こんばんは。

テンです。

前回の続きです。

まなみの元でお世話になることになった私。



とりあえず、働かなければと職さがしから始めることにしたのですが、 幼いあみを抱えて働ける場所はなかなか見つかりませんでした。

まず、車もなく、交通手段がないため なるべく近場で探さなければなりません。

まなみは、私が親との関係が悪いことは知っていましたので、すごく親身になってくれました。 夜は、あみと一緒に眠ってくれたり、 第二のお母さんのように、あみに接してくれました。



とにかく今の状況から脱するために、お金が必要でした。 私が見つけたのはまなみのマンションから徒歩で5分ほどの場所にあったカラオケスナックでした。

日払いが可能だったことが何よりの決め手でした。 まなみに相談し、面接に行った私は 即日採用してもらえることになりました。 週3回、あみを夜お願いして、働くことになったのです。

本当なら、毎日でも入ってお金を稼ぎたかったのですがまなみも働いていましたので週3回が限度でした。

本当に、お金がなければ何もできません。 無力です。

Kのことは気にかかりました。 出張からは帰ってきているはずです。

私とあみがいないことに気づいて 怒り狂っているに違いない…‥。

もし、見つかったらどうなる?

考えるだけで恐ろしい。



慣れない仕事は大変でした。 酔ったお客様のお話の相手がなかなかできず、 お酒の力でなんとかテンションをあげようと無理をする日々でした。

カラオケスナックだったので、歌が好きだった私は お客様と一緒に歌ったりしている時間はなんとかごまかせていましたが、お客様と楽しく盛り上がる話がなかなかできず、ママにはよく注意されました。

私には向いていない世界だと思いました。 お金を稼ぐって大変です。



でも、仕事が終わり、日払いでお金をもらう瞬間 は、すごく嬉しかった。



また頑張ろうと思うのでした。



こんな私でもその当時、1万円ずつもらっていましたので 本当に助かりました。



昼間のパートでそんなにもらえるところはありません。



なるべく使わず貯めていこうとしていた矢先、 そんな生活はすぐに打ち砕かれることになります。



あいつが私を見つけ出すのにそう時間はかからなかったから…‥。

まだ、働きはじめて1ヶ月も経たないうちに 仕事が終わり私がまなみの家に帰ると、 なんと玄関先にはKがいたのです!

オートロックの物件だったため、 Kは集合ポストのあたりに立っていました。



ゾッとしました。

Kは、すぐに、私を見つけ駆け寄ってきました。 「やっと見つけた。」

「なんで…‥。」



「なんではこっちのセリフだ。なんでいなくなった?」

「なんで、ここの住所…‥。」



「お前の手帳を見ていろいろ調べたんだよ。俺がいない間にお前を連れ出すなんて、悪い友達だな。」



「…‥なに言ってるの?」



「お金もないだろ?一緒に帰ろう。 早くあみも連れてこい。」

「何言ってんだよ!」私は思わず声を荒げていました。



「俺がどれだけ心配して探したかわかるか?早く連れてこいつってんだろうが!」



Kの目つきが変わりました。



まなみの部屋だけは、バラしたくなかった。



でもマンションが、バレてしまった。 部屋がバレるのも時間の問題…‥。



私は、まなみの部屋のインターホンを押しました。



「…‥。まなみ。見つかった。」

「え?なにが?」

「…‥下にいる」



「えっ!!」

まなみが慌てた様子で下に降りてきました。

「はじめまして。テンがお世話になりました。」 Kがまなみに言いました。



「はじめまして。いろいろ聞かせてもらいました。テンをあなたのところに帰すわけにはいきません。」



まなみが毅然とした態度でKに答えます。

「は?あんたが知ったこっちゃねえだろ。 テン、早くあみを連れてこいって。」 態度を豹変させるK。

「いや。帰りたくない。」



「お前の意思なのか?」



「Kさん、あなたのやってることはおかしいです。これ以上、テンやあみちゃんを苦しめるのはやめてもらえませんか。」



「あんたには聞いてない。テン、お前の意思なのかって聞いてんだよ。」 



「そうだよ。私の意思だよ。」



「てめぇ…‥。」Kが手を振り上げました。 カッとなったときのKの顔つきです。



「すぐ、暴力で押さえつけるのはやめてください。ここで暴れるなら警察を呼びますよ!」



Kは悔しそうな表情を浮かべ、 振りあげた手を下ろしました。



そしてKは「お前も俺を捨てるんだな……。」とくるりと背中を向け、歩き出しました。 f:id:mochimochimarutan:20181221081043j:plain 一瞬立ち止まり、Kが私の方を振り返りました。その表情はすごく寂しげで悲しそうでした。

意外にもあっさりと引き下がったことに 私は驚いていました。



「本当、聞いてた通り、ヤバイ奴だね! ここも見つけるなんて…‥。絶対また来るよ。」

「ゴメンね、まなみにまで迷惑かけて。」

「いーや。大丈夫。テン、絶対戻っちゃダメだよ?いっそのこと暴れてくれたらいいのに。そのときは警察に突き出してやるんだから。私がついてるから大丈夫!」



その言葉を聞きながら、 まなみに対して違和感を覚えている自分がいたのです。 まなみは、Kの悪いところしか知らない…‥。



すやすや眠るあみの寝顔を見ながら、 私はなぜか胸が締め付けられるようななんともいいようのない切なさに苛まれていました。



振り払っても振り払っても浮かんでくるKの寂しげな表情。 私を全力で求めている。 こんなに私しかいないと求めてくれる人が他にいるだろうか。

親に捨てられて天涯孤独のK。 居場所がなかった私。 親に愛されなかった私たちは孤独でつながっていた。 お互いの寂しさを埋めるように。

それが愛なのかはわからない。



私は一体なにをしたいのか。 もう、自分でもわからない。



ただ、ひとつ言えることは 私がKから完全に離れなければ、こんな私を助けてくれたまなみとおばちゃんを裏切るということ。



憎くてたまらなかったはずなのに、 自分から逃げ出したくせに、 どうして独りきりのKを思うと胸が締め付けられるんだろう。負のスパイラルから抜け出せない。



「お前も俺を捨てるんだな」 Kのその言葉が何度も頭の中に響いていました。